わたし、BL声優になりました
緑川が……と聞こえたような気がしたが、確かめる前に睨まれてしまい、聞き返すことは出来なかった。

「もう、後には引けないよ。どちらに転んでも黒瀬くんの人気が低迷するのは確実だ。

 一度の過ちで、多くのファンを失う。その覚悟を君は本当に出来ているのかな。見てきてるよね、謹慎明けに復帰した人たちの末路。

 ずっと、叩かれ続けるんだよ。根も葉もない噂を広げられて、活動を妨げられるんだよ。

 理不尽だなんだって嘆いたって、それがこの業界なんだよ」

「分かってるよ。裏切られたって、見損なったって、罵倒される覚悟なら、とっくに出来てる。

 俺はそんなに柔じゃない。上等だよ。好きな女ひとりも守れないで何が人気声優だよ。

 だったら、俺はそんな栄光なんかいらない──」

 ゆらぎは、啖呵を切った黒瀬を見上げる。

 清々しいまでに自信に満ち溢れた黒瀬の表情が、彼女にはとても輝いて見えた。

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