死神の僕は命を描く
新も描きかけの絵を仕上げるため、筆を手に取る。新の絵は、満点の星空を見上げる少年と少女の絵だ。

「新くんも上手だね!」

嘘を吐き、笑顔を作る。

「こんなの全然うまくない。でも、ありがとな」

新は無邪気に笑う。僕の言葉を本気だと思っているのだろう。

「せっかくだし、ライもなんか描いてみろよ。紙は無駄にあるしさ。何でもいいから」

新が紙を一枚僕に差し出す。僕は「わかった」と言ってそれを受け取った。

僕は美術に興味はない。しかし、相手との距離を縮めるために、相手の好きなことが得意になれる。それは人に応じて変えることができ、陸上が好きなら走ることが得意になり、料理が好きなら、どんな料理でも作れるようになる。

今の僕は、どんな絵でも描ける才能を持っている。僕は適当に鉛筆を動かした。

どれほど時が経ったのか、いつの間にか新が僕の横に立っていた。

「何描いてるのかなって思ってさ」

そう言って笑う新に、僕は絵を見せた。その瞬間に、新の目が僕の絵を凝視する。そして、他の部員たちに向けて叫んだ。
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