死神の僕は命を描く
しかし、新の目には、嫉妬など少しも入っていない。純粋に心の底から、僕の絵を褒めている。こんな人間に出会うのは、何十年ぶりだろう。

変なやつ……。

僕は心の中で呟いた。



僕は美術部に入部し、新や莉音と行動を一緒にするようにした。人見知りの莉音とも、明るい新ともすぐに『友達』になれた。

「ライ〜!一緒にメシ食おう!」

四時間目の社会が終わると、新と莉音が笑顔で振り向く。僕も笑顔を作り、「うん!」と笑う。

教室を出て、莉音と歩く。三人で静かなところで最近はお昼を食べるようになっていた。

新は購買でパンを買いに走っていく。空き教室に莉音と先に行くのはもう当たり前の光景となっていた。

「さっきの社会、おもしろかったね!」

莉音が、いつもより少し大きめのお弁当を手に持ちながら笑う。

さっきの社会の授業で、僕らのクラスでは自分の興味のある国を調べるということをしていた。僕はトラーンが仕事をしていたドイツを、新はイタリアを、莉音はベトナムについて調べた。

「うん、そうだね」

僕は心にない言葉を口にする。莉音は僕の言葉に「そうだよね」と笑う。……僕の言葉は嘘なのに。

あれ?僕は立ち止まる。この胸に感じるこれは一体……?
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