死神の僕は命を描く
新は僕が病室に飛び込んできても、驚くこともせずいつも通りだった。

「まあ、こっち来いよ!」

いつも通り笑い、僕を手招きする。僕は吸い寄せられるように新の隣に座る。

新はスケッチブックにローマの街並みを描いていた。スマホで調べた画像を写しているようだ。

「…上手だね」

そう僕が呟くと、新は「もう…行けないんだ」と悲しげに笑う。

「えっ…?」

僕が首を傾げると、新は「莉音や他の奴らにはナイショな」と言って話してくれた。

「俺……すい臓の病気なんだ……。大人になるまで生きられないらしい……」

すい臓……胃の裏側にある臓器だ。インスリンを分泌し、血糖値のコントロールをする重要な働きをしている。すい臓の病気は発見されにくく、発見された時にはもう手遅れなことがほとんどだ。

「ちょっと体調が悪いだけって思ってたんだけどなぁ……」

新は鉛筆を動かし、絵を描きながら呟く。

僕の体が震える。新に残された時間は、あと二年。死神の僕にはわかるのだ。その人の残された時間が……。
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