死神の僕は命を描く
絵が完成されていく。紙の上に、ポタリと水滴が落ちた。

「怖いんだ…。生きたいッ!生きたいんだよ!」

元気で、クラスの中心にいる新が泣いている。僕の胸が痛む。僕には、どうすることもできない。彼の命が尽きるのを、ただ待つことしかできない。

泣き続ける新に、僕は何もしてあげられないままだった。



新は時々検査入院をするだけで、あとは普通に学校に通うと言った。最後まで生き抜きたいと言っていた。

新は莉音にも、誰にも病気のことを話さず、二年生になっても病気だとわかる前と同じように明るくしていた。

なぜ、新は僕にだけ病気のことを話したんだろう……。

それだけが疑問だった。

二年生になって、一ヶ月後。五月の体育祭を終えた後、僕は家へと歩いていた。

新はリレーのアンカーを務め、クラスを優勝に導いた。とても病気には見えないし、誰も疑わないだろう。

しかし、僕は彼の時間を知っている。今どれだけ元気でも、二年すれば岩下新はこの世からいなくなるのだ。それが当たり前のことなのに、納得できない自分が心のどこかにいる。一体なぜ……?
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