死神の僕は命を描く
うつむいて歩いていると、「よっ!久しぶりだな」と後ろから肩を叩かれた。振り向くと、背の高い男性が立っていた。姿は違うが僕は男性が誰かわかった。

「トラーン…」

「ラルム、久しぶりだ!」

トラーンは明るく笑う。死神に会うのも、ラルムと呼ばれることも久しぶりだ。

「俺、今は教師のそばにいるんだ。そっちは?」

興味津々に訊ねるトラーンに、僕は新のことを話した。もちろん、病気や余命のことも…。

「そうか…。そんな若いのにな」

僕の話が終わると、トラーンは寂しげな表情になる。彼が一番つらいのは、若者が病気や事故で死ぬことだ。

「……いずれ、人間は死ぬんだ……。仕方ない」

僕はいつものようにセリフを口にする。しかし、トラーンの表情はいつもと違っていた。まるで、何かに驚くように僕を見ている。

「ラルム……お前……」

トラーンがゆっくりと口を開く。

「あの時のカルナにそっくりだ」

そのセリフを聞いた刹那、僕の記憶は途切れた。気がつけば家の中にいて、どうやって帰ったのか、トラーンとどうなったのかわからない。

トラーンの言葉が、いつまでも耳に残り、僕を締め付けた。
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