死神の僕は命を描く
「お土産があるんだ」

僕はディズニーランドで買ったキーホルダーを新に渡した。なぜ、これを買って渡そうと思ったのかなんてわからない。ただ、気がつけばこれを買っていたのだ。

「ありがとう。修学旅行、楽しかったか?」

「もちろんさ!」

僕は新に修学旅行の話を聞かせた。新幹線での出来事、ディズニーランドで乗った乗り物のこと、ホテルでみんなではしゃいで先生に怒られたこと…。

新は「俺も行きたかったなぁ〜」と悔しがる。その表情でさえ、僕の胸を苦しめた。



その日の夜、僕は月を見ていた。眠れなくて夜空を見上げると、大きな月が見えていた。

新はきっと月だ。太陽のようにいつでも強くなくても、誰かに寄り添い、安心させる。彼は月だ。

ふと鏡を見れば、自分が微笑んでいた。その表情を見た刹那、僕の目からトラーンのように、新のように涙があふれる。初めて泣いた瞬間だった。

僕は、感情を知った。新のおかげで、新が優しくしてくれたことで…。

人は神を信仰し、その教えに従って生きる。しかしその神様は残酷だ。善人の命を奪い、悪人を生かす。なんて不公平なんだろう。
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