死神の僕は命を描く
僕ら死神が住んでいるのは、人間も聞いたことのあるあの世。そこには死神だけでなく、幽霊や妖怪、神々が集まって暮らしている。幽霊は天界へ行く途中に立ち寄る程度だけど。

その日の朝も目を覚ますと、ベランダで育てている植物の様子を見に行く。植物を育てるのが趣味というわけではなく、僕が育てている植物はどんな怪我や病気でも治せる優れものだからだ。損をしないことはとりあえずしてみる。

植物に水をあげると、僕はさっさと会社の制服に着替える。死神は単体で活動するわけじゃない。数多くの会社のどこかに所属し、その会社のルールに従って活動する。

死神の姿は自由なので、腰の曲がった老人の姿の死神や、ハイハイを覚えたばかりの赤ちゃんの姿をした死神もいる。

死神は食事をしなくても生きていけるので、僕は朝食はとらない。昼食も夕食もとらない。……人間と関わる時は別だが。

「……」

僕は着替えを済ませ、顔を洗って歯を磨くとすぐに家を出た。一人暮らしなので、家で声を発する必要はない。でも、寂しいとかは感じないんだ。
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