死神の僕は命を描く
それでもよかった。新が生きてくれるのなら。幸せになってくれるのなら、こんな僕なんていらない…。

初めて誰かの幸せを願えた。もうこんなことは永遠にないだろう。だから、最後までどうか生き抜いてほしい。

人に感情が存在するのはきっと、短い人生を多くの人と歩んでいくためにあるのだ。人と共感し、分かち合い、ぶつかり、支え合い……。きっと新なら、やり遂げられる。

「……さようなら……」

僕の姿が消える。それと同時に、新が目を覚ました。

新は辺りを見渡し、首を傾げる。そして再び眠りについた。



俺の病気がなぜ消えたのか、未だに誰もわからない。奇跡としか言えないのだ。

そんな俺は、今日高校生になる。

「新!入学式遅刻しちゃうよ!」

幼なじみの莉音が、高校の制服を着て言う。

「わかってる!身支度に時間がかかったんだよ」

ふと、莉音が俺のかばんにつけられたキーホルダーを見て「あれ?」と呟く。

「新、ディズニーランドに行ったの?」

「これ?いや、行ってない」
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