死神の僕は命を描く
ふと横を見れば、トラーンは耐えきれなくなったようで、涙を流して泣いた。

僕は、正直何も思わなかった。涙なんて、悲しむなんて、馬鹿らしい。疲れるだけだ…。

「みんなおはよう。仕事を今日も頑張りましょう」

フロアに社長が現れ、全員の顔に緊張が走る。泣いていたトラーンも涙を拭いた。

「ラルム、君に頼みたい仕事があるんだが…」

社長直々の依頼に、僕の心が躍る。出世に大きく動くだろう。地位が手に入るチャンスだ。

「はい。何でしょうか?」

「この子の見守りをしてほしい。あともう少しで余命宣告を受ける」

社長から資料をもらうと、僕は「ありがとうございます」と言ってフロアを出た。仕事に向かうためだ。

岩下新(いわしたあらた)、中学一年生。美術部所属。明るいクラスのリーダー。

資料を読みながら会社を出る。そのまま駅へと向かい、電車に乗った。電車に揺られること一時間。あの世とこの世の境目へとやって来た。

駅の外には、夜でもないのに真っ暗な闇が広がっている。そして光り輝く川が流れている。

その川に僕は下半身をつけ、この世に行くための呪文を唱えた。
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