死神の僕は命を描く
二人は美術部に入っている。僕はさりげなく訊いた。

「ねえ、この学校って美術部ってある?」

すると、莉音の目は見開かれ、新の目は輝いた。

「もちろんあるよ!俺たちは美術部なんだ!」

僕は新のような笑顔を作り、はしゃぐ。

「やった!僕、前の学校でも美術部だったんだ」

「よかったら、見学に来る?今日は活動の日だから……」

莉音の提案に、新が「莉音ナイス!」と言う。

僕は、放課後に美術部を見学することになった。思ったよりも順調に仕事が進む。

僕は美術になど興味はない。だが、人間は好きなことが同じ人間を好むと死神をしていてわかった。仲良くなるには、相手の好きなものに興味があるフリをすればいい。

新は男子たちと輪になって話をしている。僕は会話に耳を傾けた。

「あの先生、マジうざいよな」

「それ!俺、この間わけわかんないことで怒られたんだぜ!」

「うわ、最悪!マジ死ねって感じ」

「仕返ししたいよな〜」

「賛成!何したら、あいつ驚くかな」

馬鹿なことを話し、手を叩いて男子たちは笑う。新もその一人だ。輪の中心でみんなと笑う。……自分に残された時間など何も知らずに。
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