もののけ姫に愛されて。。
「言葉、そのままよっ!
美結のこと、泣かせないでよ…」

「分かってます…」

律の言葉に、安心したのか…美結の表情に笑顔が戻る…


瑠奈は、2人の邪魔をしないよう…すぐ様、前を歩く悠斗の方へと駆けて行った…

「…ありがと…、さっき…」

唐突…とも取れる…、美結の言葉に、歩道の右側を歩く美結に視線を向ける…

なんのことか、一瞬…分からなかった…

「さっき、否定しなくて…嬉しかった…」

あぁ…、そのことか…と、ようやく思い出した…

「別に…、ホントのことでしょ?」

「…そうだけど…。ほら、いちお…試用期間じゃない?」

「……っ」
《そんなことを気にしてたのか…っ》


律は、美結が持っていた大きなバックを指さした…

「それ、なに?」

「あ…、お弁当…。
大したのじゃないけど…」

律は、美結が持っていた大きなバックを持とうと手を差し出した…

「あ、ありがと…」

「…良かったのに。大変だったでしょ?」

そのバックを受け取る時…、美結の指先には幾つも絆創膏が巻かれていた…

「…あ、不器用だから。でも、お母さんに手伝ってもらったし…」

耳元まで、紅潮させながら言った美結の言葉に…、律は軽く微笑んで見せ…

そのバックを左手に持ち替え…、美結に右手を差し出した…

一瞬、何ごとか…? 分からなくなった美結は、首を傾げる…

「手。
デートじゃないの? 今日って…」

美結は、一瞬にして…花開いたように…満面の笑顔となった…

「…うん…っ!」


その、笑顔を見るだけで…胸元が暖かくなっていっているような感覚がした…


「……」
《…これで、良かったんだ…

何より、素直に気持ちを現してくれる彼女の表情を曇らせたくはない…


それだけは、真実なのだから…》


その次の瞬間に、

脳裏に浮かんだ人…


「……っ」
《あの人を、想っても…


自分には、どうすることも出来ない…


それならば……》


いま、目の前で笑ってくれている彼女を大切にすることの方が…と、自分に言い聞かせるかのように…


「西園寺くん、夏休みの課題、終わった?」

唐突…とも取れる…美結の質問に…

「…あ。まぁ…あらかた…」

「そぅなんだ。今度、数学、教えてくれるかな? 得意だよねー?
理系…、クラスで1番だもんね?」

「うん、いいよ」
《このまま…、

この世界に、留まっていられるように…》
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