もののけ姫に愛されて。。
「そうね、まずは、そのお嬢さんに話なさい。」

と、急に声を発した由紀子…

「え? こんな話、誰が信じるの?」

「そうね、信じないわね? …信じないかもしれない。
でも、律も…小中学生の頃と違うでしょ? それを話して…離れていくようなら。。それまでよ…」

「……っ」
《それは、そうだ…

それで、話をした所で…信じるとは思えない…


もぅ…、自分が信じた人が、離れていくのが…嫌なんだ…》


「律、あなたもあの頃と違うでしょ?
話そうか…、迷っているのは、それだけ大切に思っているからよ。」

いつもなら…、律のことを【りっちゃん】と、愛称で呼ぶ母だが…真剣な話をする時は、【律】と、名前で呼ぶ…

「何処から…何処まで? 話せば…?」

「それは、あなたが決めること! もぅ、17なんだから…半分は、大人でしょ?
もし、話をして…困ったことになったら…連れて来て。」

「…それは…、除霊するか、どうかってこと?」

「外国人の美人の幽霊さんを除霊出来るか、分からないけど。
おばあちゃまだったら…出来るかのでしょうけど、私は、その子たちの気持ちを聞いてからね…」

「……っ」

「よく、考えて…」

そぅ、言い残し…由紀子は、その部屋を出ていった…


「……っ」
《こんな話をして…、

三枝は、信じてくれるのか…?》


律の脳裏に、中学時代の自分の姿が思い出された…

中学3年になった春…
好きになった同じクラスの女の子がいた…、彼女の未来に、死の影が近づいていることを感じ取った…

彼女に、帰宅時は、1人で帰らぬよう…、遅くならないよう…、見知らぬ男に気をつけるよう…忠告した…


その1週間あと…、彼女は、見知らぬ男に襲われ…暴行を受け…、自殺をしたのだった…


その事件の前後…に、彼女は、律から忠告を受けたこと…、知っていて…助けてはくれなかった…ということを親しい友人に、話していたのだった…


律の知らぬ間に…、周りの人間は、律を避けるようになり…

律の感の鋭さ…や、持ち合わせている霊感で…カンニングまがいのことをし、成績もいい…という噂まで広まっていた…

「……っ」
《あの頃とは、違う…――!

アレから、心も…、精神も…、深く…他人と関わらないように…

蓋をして…生きて来たのに…


彼女に、話をして…、本当に、信じてくれるのか…――?》
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