もののけ姫に愛されて。。
「……えっ?」
《いまの…っ!》


すぐ様、その通路の方へ向かう…

…が。。

その紅い着物が通り過ぎた方には、紅い着物を身につけている人物などいなかった…



「…っ!」

一瞬にして…、冷や汗と共に、背筋が凍りついていくようか感覚がした…


「……」
《あの紅い着物…、

ばぁちゃんの法事の日に…、寺の境内て見かけた…

あの幽霊の…っ!》


血の気が引いていくような感覚がした…


「…まさか…っ」
《あの時の幽霊が…っ?


あの時…、確かに視線がぶつかっていた…


まさか、自分にあの少女の幽霊が取り付いているのか…?》


その時、すぐ近くにあったはずの本棚の本がバザバサ…と、手も触れていないはずなのに…本棚からなだれ落ちた…

あまりの衝撃に、声が出そう…になった…


「なんで、いきなり…っ」


霊障で、ラップ音や微かにモノが落ちる…ことは自宅でもあったが…

ここまで大きな霊障は、あまりなかった…


律は、腰を下ろし…、その本がちょうど開いているページを目にする…

「…ヨーロッパ…?」

が、いまの地図ではなく…何世紀も前の地図が開かれていた…


「…何処かで…っ」
《見たことがあるような気がする…っ》


その時に、脳裏に浮かんできた映像…

玉座にいる自分と…、数段したの広間にひざまずいている…銀色の髪に金色の瞳をした美しい人…

涙を流し、何かを訴えている…


「…リア…、アリア…っ」


急に、脳内を引きずり出されるかのような耳鳴りと…、瞳に突き刺すような傷みが走った…


「…い…っ!」
《…これ、かなり強い霊体…っ》


両耳を塞ぎ…、瞳をぎゅっと閉じる…

心臓の鼓動まで、急激に早まっていくのを感じた…


荒くなっていく呼吸を、どうにか…冷静さを取り付くようように…深呼吸を繰り返すことしか出来ない…

「……っ!」
《…これ、ヤバい…っ!》


ぎゅっと閉じた瞳の奥に…、断頭台に消えた…彼女の姿があった…

『……っ』
【私は、これで良かったんだ…

そぅ、思いたかった…


だが…、彼女を失って…、何もかも失った…

国も…、王位も…、自分でさえも…】


そぅ…、声が聴こえた…

アレは、自分の声だ…

遠い昔の…、自分の…


「……っ!」
《アレは、生まれる前の時代の…?》


そぅ、瞳を開けた…その先に、自分の頬に暖かな温もりを感じたような気がした…

目の前に、紅い着物を身につけた…祖母の天音の法事の時に出会った少女がいた…



< 8 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop