もののけ姫に愛されて。。
その瞳は、やはり…ヒトではないモノのソレだったが…

初めて出会った日に感じた…恐怖心などは感じなかった…

「…きみは…、誰…?」


目の前の少女の瞳が、魔物のような瞳から…人に近いモノになってきていた…

ゆっくり…と、律に微笑み…


その姿が、銀色の髪の少女に変わっていった…

「…やっと、気がついてくれた…」

そぅ、微笑む少女…

律の耳鳴りも瞳の傷みも…、痛みが和らいでいった…


「…リア…、私を…恨んでいるのではないのか…?」


自分の声音とは違う…

…が、ごく自然に…、そぅ口にしていた…

自分よりも、微かに低く…威厳のある声が発せられた…


その、次の瞬間…


「…っ律~!」


自分のことを探す…悠斗の声だ…


瞬時に、その目の前にいたはずの少女の姿が一瞬にして、かき消された…

「…あっ!」
《…消えた…っ》

まるで…、何事も無かったかのように…


自分と、床に落ちた…一冊の本を残して…

「律、こんなとこにいた…なに、してる?」

律は、自分を見下ろすような悠斗に…

「…あ、なんでも…っ」
《こんなハナシ…、誰も信じるわけがない…》


その床に落ちた本を拾い…腰を上げた…

「飯でも行かない? 図書館、閉まるし…」

悠斗は、そう言うと…

律が手にしていた本を覗き込んだ…

「律、その本、読むの?」

そぅ、悠斗に言われ…その本の表紙を見つめる…英文で書かれた本だった…

分厚い…、全て英文で書かれている文章…

「いゃ、読めるワケないって!」

悠斗に、ムリに苦笑いを浮かべた…

律は、その本を本棚にしまい…悠斗と先程まで課題をやっていたデスクに向かっていく…


「……っ」
《どうして…

俺は、あんな事を口にしたんだ…?》


デスクに広げたままになっていた課題のノートや参考書や本をバックにしまう…

その手を動かしながら…、全く違うことを考えていた…


先程の…、銀色の髪の少女に変貌した…あの少女のことを…


あの2人の少女は、確実に…1人の精神を兼ね備えている…


自分は、その人物を知っている…


「……っ」
《自分は、いったい誰なのか…?

いったい、何処に向かっているのか…――?》
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