クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
初めまして間違いました

高級ホテルのロビーという場所は、別世界で感心する事が多い。

まず
いい香りがする。
最初にそれ?って言われるかもしれないけれど、次から次へと目まぐるしく人が交差する中で、このホテルのロビーは心地よいアロマの香りが行き届く。そのおかげかこちらの気持ちにも余裕が出て、芸術的なオブジェを見ても「よくわからない物体」から「曲線が美しい芸術品」という気持ちになるから不思議だ。

足元はベージュのクッションフロアで音も立たない。壁は磨かれて輝きを帯び、従業員の物腰にまで品のある超高級ホテル。だからゲストもその雰囲気に飲まれて背筋を伸ばしてしまう。

私は一回立ち止まり、深呼吸をしてフロントを通り過ぎ、ホテルのカフェへと繋がる道へと歩き出す。

素敵なホテルの雰囲気を味わいたいけど
足が重いし
気も重い
でも一番重いのは、今日の目印であるルビーのイヤリング。
今どきこんな親指爪クラスのルビーなんて、耳に着ける女性はいないでしょう。でも目印だからしかたない。

鏡のような壁に映った自分の姿を見て胃が痛くなる。
肩までの髪をお嬢様風にゆるっとふわっとさせ、襟の大きなフリルが可愛らしさを強調する白いシンプルなブラウス。品の良いブラウンのロングスカートにビジュ付きのパンプス。


似合わない。

早く終わらせて帰ろう。
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