クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
「では、改めてまた妹から連絡させます」
「その前にあなたの連絡先を知りたい。LINE交換してよろしいですか?」
「あ……はい」
私を通して妹と連絡とる?
ちょっと考えたけど長田さんが携帯を出したので私もバッグから自分のスマホを取り出した。携帯を持つ長田さんの手首から高そうな腕時計が見えた。ロレックスってやつかしら。ミニロトを当てて中古の軽自動車買いたいって願う私とは世界が違うわ。
LINEを交換して
新しいお友達に長田さんが増えたと思ったら
長田さんじゃなかった
大下弘一さんという
見たことのない字が並んでた。
「長田……さん?」
頬をヒクヒクしながら彼の顔を見ると
「初めまして、大下弘一(おおした ひろかず)と申します。ホテルを褒めてくれてありがとう」
次に彼は自分の胸ポケットからブランド物の名刺入れを出し、高そうな名刺を私に渡してくれた。そこには金の文字で流れるアルファベッドで書かれていて、黒い文字で日本語で書かれていた。
ホテル アルテミス
専務取締役 大下弘一
長田さんじゃなくて
ここのホテルの専務さんでした?
アゼンとする私の肩をトントンと後ろの席から誰かが優しく叩く。
逃げるようにそちらを見上げたら
ブルーグレーのスーツの男性が冷たい目線で立っていて、スッと私の耳元に手を伸ばし、大きなルビーのイヤリングを触った。
「緒方玲奈さん。そっちじゃなくてこっち」
イヤリングに伸びた指が私の頬をそっと撫で、向かいに座っている大下さんの目が鋭く光った気がした。