クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!

「玲菜っ!」
「おねーちゃんっ!!」
興奮してる母と妹。頼むから何も聞かないで欲しい。私は台所で目を輝かせる二人を押さえてソファの端と端に深く座る二人を前に床に正座する。

「おかえりなさい」
チャコールグレーのスーツを着こなし、優しく微笑む大下さん。癒し系で上品な顔つきはこんな庶民の家でも王子様降臨って感じがする。

「遅いぞ」
軽く言う長田さんは薄手のデニムジャケットに白シャツ。爽やかな眼鏡男子。

「えーっと、両方にお断りの連絡をしたのですが……」
他人の家なのに堂々としている二人を前にすると、こっちがなぜか下手に出てしまう。

「直接、顔を見て断って欲しくて」
大下さんは私の手をとり、そっと自分の手で包むから心臓が跳ね上がる。

「都合悪いって?定時に帰って来たじゃん」
長田さんはクイッと私のアゴを長い指でつかみ、綺麗な顔を接近させる。眼鏡の奥の目が澄んでいる。

いや
そうじゃなくて
何これ?

「食事に行きましょう」

「こっちも予約してる」

「車を呼びます」

「俺が優先。だって本当の見合いの相手は俺だよ」

「僕が先に出会った」

部屋の空気がピリピリしてるし、台所から覗く母と妹がワクワク顔でこっち見てるし。長田さんと大下さんは私を真ん中にしてにらみ合ってるし、もういい加減にしてほしい。

「三人で行きましょう!」
誰にも負けないくらい大きな声で私はそう言って立ち上がる。

どうにでもなれっ!
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