クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
ピーンポーンと、こんな大事な時にお客さん。
宅急便さん?回覧板?
火加減をチェックしてから私は走って玄関に向かってドアスコープを覗くと長田さんが立っていた。
「長田さんっ?」
「玲菜?鍵開けろ」
「何の用?」
「婚約者に冷たいな」
「婚約してません」
「開けろ」
「今は手が離せないの。パンケーキ焼いてるから」
「食べる食べる」
ドア越しに子供のような声を出している。
「ちょっとしかないよ」
「半分しよう。早く開けないと玄関前で叫ぶぞ。近所の人達が驚いて注目するぞ」
「脅さないで」
台所のパンケーキが気になってつい私は玄関の鍵を開けると、長田さんは嬉しそうに中に入った。
「コゲる」「走れ」
ふたりで台所まで走りフライパンのふたを開け、私はフライ返しでほどよく弾力がある美味しそうなパンケーキをひっくり返した。返すと見事なキツネ色。色も香りも申し分なし。完璧だ。
「すぐ食べる」
子供のように手を伸ばす長田さんの手を叩き「引っくり返してから余熱でまだ焼くの」と怒る。
「パンケーキ奉行か?」
文句タラタラ言いながら昨日のソファに横たわって目を閉じる長田さん。ソファから長い足がはみ出してるよ。なんか……お疲れ?目を閉じるとまつげが長いのが印象的だ。