クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
「できたら教えて、手伝うから」
目を閉じながら私に言う。
手伝う感じじゃないけどな。
「もう少しでできるよ。もう火は消したから余熱待ち」
「火は消した?」
「うん」
すると長田さんの手がしなやかに伸び、油断して近寄る私の腕をつかんで私の身体を自分の身体の上にのせた。
「いやちょっと!」
「少しだけ……甘えさせて」
低い静かなお願いに、私はなぜか黙ってしまう。
長田さんは私を抱きまくらのように抱いて目を閉じる。
「昨日……途中で帰ってごめん」
トーンを抑えた声が真剣だった。だから私も首を横に振る。
「バラの花、ありがとう」
「うん。直接渡さなくてごめん」
俺様内科医は顔を見ない方が素直になるるようだ。子供みたいでなんか笑ってしまう。
「笑うな」
手に入れた力が強くなって苦しい。
「容態の気になる患者さんがいてさ、先月うちのクリニックに来たんだけど検査結果が引っ掛かって大学病院に紹介状書いたんだ」
「うん」
「大学病院と連絡取り合って様子を教えてもらったら、昨夜容態が悪化して、治療方法が俺の納得いけるものじゃなくて……あ、ごめん変な話だ」
「いいよ、続けて」
「結局患者は助かったけど、やっぱりさぁ……個人のクリニックって限界あるよな。自分の力で最後まで見れないってゆーのか……そんな壁ばっかりで嫌になる」
昨日は仕事だったんだね。
それも自分の手の離れた患者さんの容態を気にしての話か。