クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
安さで有名なチェーン店は混んでいた。
とりあえずビールが欲しくて
押し込まれたカウンター席は狭く、長田さんの腕が触れるほどの距離だった。
長田さんとビールで乾杯して、ため息ひとつ。
デート断ればよかったと、いまさら思う私……遅い。
長田さんはコーティングされたペラペラメニューを楽しそうに見ていた。
「安っ!これなに?ありえない値段だねここ」
今日のメガネの形は丸みがかっていて優しい雰囲気だ。ファンタジー映画でトランクの中に入る主役の人の髪みたいだね。
「お店を予約してたのに、ごめんなさい」
素直に頭を下げたらカウンターにぶつけた。そのまま起き上がりたくない気分。
「カウンター土下座すんな」
「起き上がりたくない」
「肉体的な疲労か、精神的な疲労か言え」
「認めたくないけど精神的なモノです」
「言え」
「言いたくない」
「大下なら『それならいいよ』って言うけど、俺はあいつほど優しくない。俺が注文している間に考えをまとめろ」
俺様内科医はメニューを広げて楽しそうに注文していた。お金持ちは安い居酒屋チェーンに縁が無かったのかしら。妙にワクワクしているね。
いつもより早くジョッキを飲み干し、次のジョッキを注文すると「それで?」と、遠慮なく聞いてくる。
だから私はポツポツと話し始めた。