クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
すごく好きだった。
このまま結婚すると思っていた。
でも相手に恋人ができた。私達は別れた。
もう終わった話なのに
今日、ふたりが並んで課長に結婚を報告した姿を見て虚しくなった。
って話をした。
長田さんは軟骨のから揚げを食べながら
「くだらねー」って私に一言。
だから言うの嫌だったのに。
タコわさびがピリッとくる。
「まだ好きなの?」
「違うと思う。でも……」
「振られた時にちゃんと泣いたのか?」
「えっ?」
意外なセリフに長田さんの顔を見る。
「玲菜の事なら『仕方ないな』とか強がって終わらせてんだろ。意味不明なぐらい叫んで泣いてみたら?」
確かに
しばらく暗くジメジメ泣いたけど
思い切り泣いてなかった。
「いつ泣くの?」
「今でしょう」
長田さんは笑って私の頭を抱きかかえ、ジョッキのおかわりを注文した。
だから
私は泣いた。
彼の胸元で泣いた。
はたから見れば、酔っ払った泣き上戸のアラサー女が彼氏とケンカしてなだめられてる図だろう。
私もたまに見かけて『こんな場所でケンカ?』って苦い顔して見て見ぬふりしてた。見苦しくてごめんなさい。でも……守ってくれる人の腕の中って、どうしてこんなに温かくて優しくて泣けるんだろう。
「ばかー!大嫌い!」
「はいはい」
長田さんは淡々と受け止めてくれて
私は心から
今度こそ
元カレの変な『想い』という『呪い』を打ち破った。