クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
「スッキリした?」
「うん」
店を出て
すぐタクシーを拾わずに少し歩く。
泣いてスッキリしたせいか、ほろ酔い気分が心地よい。
泣くだけならひとりでもできる
きっとこんなにスッキリしたのは、受け止めてくれる人がいたからだ。
「俺さぁ、抜け駆けしたいけど反則?」
ふいに言われて長田さんを見ると、彼は街灯の下で切なく甘えた顔をする。
その顔こそ反則だよ。
「でも大下の気持ちを考えると、困った。あいつは桁外れな金持ちで人間的にいいヤツだ」
長田さんの言葉にうなずくと「同意するな」って頭をコツンと叩かれた。
自分から言ったくせに面倒なヤツ。
「顔もいいよ」
追い打ちをかけたらムッとする。本当に子供だなぁ。
「俺の方が顔はいいし、性格もいい」
「はいはい」
「今までこんな扱いされた事ないわ」
「よかったよかった」
「棒読みやめろ!」
ギュッと肩を抱かれて急接近。あらためて距離が近くてドキッとする。
「でも……真面目に、あいつは玲奈が好きなんだ。結婚したら贅沢できるぞ」
「マルセイユ石鹸が山ほど買える?」
「小さいわ」
この話題を避けて長田さんと話をしたい。