クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
気分を落ち着かせる為にコーヒーでも飲もうかと思ったら
「玲菜さん!」と、絶対この場所では聞こえないはずの甘く高揚した声がフロアに響いた。
まぼろしか?
「おっ……大下さんっ!」
なんで?なぜに大下さんが私の職場にいるの?
「仕事中すいません。どうしても顔が見たくて」
まっすぐ私の元にやってきた王子様を見てみんなが驚く。
私が一番驚いているはず。
品の良いダークグレーのスーツはウエストを絞りスタイルの良さが目立つ。背が高くて優しそうな目が印象的で全体的に上品さが滲み出るのは、御曹司というブランドなのか。
大下さん越しにフロアの入口を見ると、常務と部長がこちらを注目している。その後ろに見えるのは凜華ちゃん。なんで凜華ちゃんまでこのタイミングで居るの。
「どうしたんですか?」
「僕のホテルにこちらのオリジナル日本酒をプレゼンされまして、玲菜さんの職場と知って僕の方から足を運びました」
お仕事ですか。あービックリした。
「玲菜さんに会いたくて」
甘い声と顔で言われたら、おせじでもクラッときますね。
「今夜会えますよ」
「一秒でも早く長く会いたくて」
こんなセリフを言っても似合う人は珍しい。クスッと笑うと彼も微笑む。王子様の微笑みにフロアの女子社員のタメ息が重なった。