クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!

考えがまとまらず少し焦る私を見て、大下さんはそっと手を伸ばし、グラスを持つ私の手に自分の手を重ねた。

「僕は本気です。玲菜さんと少しでも一緒に過ごしたい」

「大下さん」

「出張が多いと不安なんです」
優しい笑顔も真剣な顔も、両方似合う人だった。

「必ず幸せにします。僕にはその自信がある、結婚して下さい」

「まだ時間が足りません」
逃げ切れなくて、泣きそうな声が出てしまう。

「そう……ですね。困らせてすいません、でも僕の真剣な気持ちをわかってほしくて」
素直に謝る大下さん。

「ありがとうございます」
何に対しての【ありがとう】なのか、自分でも混乱している。

「どんな贅沢も、どんな願いも叶えます」

「贅沢はいりません」
慌てて否定すると笑われてしまった。

「頭の隅にでも入れて考えて下さい。料理が来ましたね、食べましょう」
そう言って
大下さんは世間話を始める。

私は突然の旅行のお誘いとプロポーズに戸惑いながら、なぜかまた長田さんの寂しそうな顔を思い浮かべていた。
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