クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
「プロポーズも抜け駆けになるのでしょうか」
帰りのタクシーの後部座席に並び、大下さんは私に聞く。
「どうでしょうね」
「長田君は優しい人です」
「優しいですか?」
思わず声を上げてしまった。
「真面目で優しくていい男ですよ」
「ドSの俺様ですよ」
「だから僕は少し焦ってる」
「それでプロポーズを?」
「そうです」
距離を近づけて肩を抱かれた。
大下さんの香りと微かなアルコールの香りに酔ってしまいそう。
「結婚はタイミングだから、この人と思って長く付き合っていてもダメになる時はダメになる」
私と元カレですね。
「かと思えば、一瞬で恋に落ちてすぐ決まる時もある」
返事をしないでいたら、大下さんの手に力が入った。
ギュッと抱かれて私は大人しくなる。
「僕は運命とタイミングを信じます」
大下さんは私の耳元で囁いてから、自分の唇でそっと私の唇をたぐり寄せようとしたけれど、私はなぜか首を横に振りキスを避けてしまった。
イケメン金持ち御曹司にここまで言われて
なぜ拒否するんだろう……私。