クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
狭い路地裏の空に満月がポッカリ浮かんでる。
ビルにサンドイッチされてる満月はインスタ映えしそうなくらい綺麗で、強くつかまれた腕の痛さも忘れてしまう。
「大下から電話きた。『玲奈に抜け駆けプロポーズした』って」
「……されたよ」
隠すのが嫌いな大下さんらしい、堂々と長田さんに宣言したんだね。
「返事したのか?」
「してない」
「すればいいじゃん。あいついいヤツで桁外れの金持ちだから」
私の目を見ないで長田さんは言う。
卑屈なのは長田さんも一緒なんだね。私達は似てるかもしれない。
「長田さん……私の事は遊びだった?」
「なんだそれ?」
私の言葉に顔色を変えて怒り出す。
「急に突き放すんだもん」
「言ってる意味わかんねー」
「私だって……自分で言っててわかんないよ」
なんか泣きたい
よくわからないけど泣きたい。
あぁ
どうして長田さんの前に出ると、自分が女の子になってしまんだろう。
こんなアラサーで仕事もしてるし、家でも会社でも、頼りがいのある大人女子としてきちんと立ち回ってるのに……「泣きたいよ」って本音が出てしまう。