クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
「エグゼィクテブスイート……どうしよう」
想像もつかない高級ホテルのエグゼィクテブスイート。
「どうしようって?泊まるのやめる?」
「やだやだ!絶対泊まる。ひとりでも泊まる!」
「ひとりって何?」
「だってスイートなんて泊まった事ないもん」
テンション上がってしまう。
「あ……部屋番号忘れた」
「何ですって?」
本気で怒ると余裕の笑顔で私の頬をつまむ彼。
「嘘、覚えてる。濃い夜を過ごそうか」
濃い夜って……思わず顔が赤くなる私。
「玲菜の顔がエロい」
「エロくない。エロいのはそっちでしょう」
高級ホテルのカフェでエロい発言するなんて、恐れ多いわ。声をひそめて小さくなってしまう。
「ちょっと行ってみない?」
「私……着替えも何も持って来てないし」
準備してません。
それにまだ……長田さんとはキス以上の事もしてないから、心の準備もしてないし……って、大人なのにね。いくつになっても恋愛の始まりは緊張してしまう。
私の心を見透かすように、彼は「大丈夫。部屋を見に行くだけ、襲わないから大丈夫」そんな優しい声を出す。
「ここのホテルのスイート見た事ないんだよね」
「他はあるの?」
「まぁ」
ごにょごにょと言われてしまった。
どうせ昔の恋人とあちこち行ってるんでしょう。ムッとすると手をギュッと握られた。
「玲菜の怒ってる顔って好きだな」
「ドS」
「でも、こんなに本気で好きになった相手と過ごすのは初めてだから、それは信じてほしい。玲菜となら今すぐここのホテルの式場を予約してもいいぐらい。大下を呼び戻そうか?」
スマホに手を伸ばそうとするので、全力で止めてしまった。
早い早い。
流れが早すぎる
けど
彼の言葉が、たとえようもなく嬉しかった。
「行こう」
「……うん」
私は彼の後に続いてカフェを出る。