クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!
「だから綺麗なんだ。カフェのグラスがバカラなんて贅沢ですね」
私は大切そうにグラスを手にして、庭に透かして景色を楽しんだ。
「バカラ越しの景色も贅沢です」
「面白い人ですね」
「素敵な場所でお見合いをありがとうございます。こんな高級ホテルに入る機会ないので嬉しいです」
そこで私はブレンドを注文して、楽しそうに笑う長田さんを見つめた。
笑った顔がとても優しい。
「このホテルは合格ですか?」
「合格も何も……ロビーも落ち着いていて、いい香りがしました。しませんでした?」
逆に聞くと長田さんは不思議そうに鼻を動かした。
「カフェじゃなくてロビーです。人をリラックスさせる香りがしました」
「気付かなかった。常務に聞いてみよう」
常務?聞き間違えたかな。
「それで、緒方さんだっけ?」
「はい。あ、すいません話の途中です。えーっとですね……どこまでお話したのか」
「妹さんの優菜さんの代わりに、お姉さんの玲菜さんがいらしたのですね?」
「そうです。すごいですね、それ完璧です」
目を丸くしてそう言うと、また笑われてしまった。
「……笑いすぎです」
「ごめん。めったに笑わないんだけど、何だろう、君といると笑ってしまう」
「失礼です」
ここは怒った方がいいのだろう。
「そうだね失礼だ。悪かった」
謝りながらもまだ笑ってる。
まぁいいか。
私も笑顔を見せてしまう。
話しやすい人でよかった。これは話がすぐ終わりそうだ。