ヒマワリ
一触即発の空気。

どうしていいのかわからず、おろおろする香奈の前に突然弁当が突き出された。

先ほどの男が、怒りの表情で立っている。

「おい、何だよコレ!」

「えっ……?」

「だれが温めろっつった?
 中のチェリーがホカホカんなってんじゃねーかよっ」

そう言って弁当を指す。

「や、でも、温めるかどうかちゃんとお聞きしましたけど……」

「しらねーよそれ。
 聞いてねーし。
 どうしてくれんだよこれ。
 こんなん食えねーよっ」
 
その間にも女子高生とオバサンの口論もどんどんエスカレートしていき、店内は騒然となる。
   
店の奥から、店長が慌てて飛んでくる。

「申し訳ございませんお客様。
 なにか粗相がございましたでしょうか……」

「冗談じゃねーよ、教育がなってねーんじゃねーの?
 お客様なめてんじゃねーっつーの」

店長、へこへこと頭を下げる。

「いやー申し訳ございません。
 ほら、君も頭を下げて」
 
店長に後頭部をつかまれ、強引に頭を下げさせられる。

女子高生とオバサンの口論はさらに続き、男はしつこく因縁をつける。

喧騒の中、香奈は何度も頭を下げ続けた。
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