ヒマワリ
彼の部屋・3
その日の彼は、いつにも増して真剣な表情で玉を磨いていた。

部屋の扉が開き、香奈がそっと顔を覗かせる。

「ちわー」

香奈に気づくと、彼は顔だけ上げて、ちょっと笑って言う。

「やあ、いらっしゃい。
 もうじき、ついに、玉が完成するよ」

「(小声で)完成って、元からボーリングの玉じゃん」

「ん? なに?」

「なんでもないなんでもない」

ぶんぶんと手を振る香奈。

部屋に上がるといつものように彼のそばに座り、作業を観察する。

玉磨きに集中し、香奈の存在をまったく忘れているような様子の彼。

香奈、そわそわしはじめる。

部屋の中を眺め回したり、携帯チェックをする。

彼は黙々と玉を磨いている。

堪えきれず、彼に話し掛ける香奈。
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