ヒマワリ
「ねえ」

「(上の空)ん~?」

「いつからココに住んでんの?」

「(上の空)う~んどうだろ」

「いつからその玉磨いてんの?」

「(上の空)う~んどうだったかな」

「それ完成したらどうなるの」

「(上の空)う~ん、たぶんね」

「……森光子って、実はサイボーグなんだよ」

「(上の空)だよね~」

「あたし、実は男なの」

「(上の空)そっかぁ」

「ヒゲも濃くって大変」

「(上の空)そうそう」

「あなた、アホでしょ」

「(上の空)まあねぇ」

むっとした表情になる香奈。

「(少し強い口調で)ねえっ」

「(やっぱり上の空)んー」

「本当に、あなたこれで人を救えると思ってるの?」

香奈の頭に、昼間ののぞみとの出来事が浮かんだ。

「そんなボーリングの玉で、人が救えるの?」

彼は顔も上げずに答える。

「(笑いながら)あたりまえじゃない。
 なに言ってんの」

香奈はさらに続ける。

「傲慢じゃない?
 人が人を救うなんて」

彼は手を休めず、少し首を振りながら言う。

「人を救うことだけは、神様にだってできやしないよ。
 それが本当にできるのは、しなくちゃいけないのは、同じ人間だけさ。
 それに救うのは、僕だけじゃない。
 僕はきっかけを創るだけさ。
 君や、君の友達や、そのまた友達や知り合いやアカの他人や、それらみんなが、みんなを救うんだ」
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