ヒマワリ
「ねえ、のぞみ。なに、あれ」

問われたのぞみは“彼”に目をやると、露骨に顔をしかめた。

「ああ、あれ。
 うちの近所の超有名人よ。
 香奈は知らないっけ?
 ほんともうやんなっちゃうんだから。
 係わり持っちゃだめだからね」

そういうとのぞみは香奈の腕を取り、引っ張って行こうとする。

香奈は引き摺られながら、それでもまだ男のほうが気になった。

「あぶない人なの?
 なにしてんの、あれ」

「しらないよ。知りたくもない。
 あんまキョーミ持つと、仲間にされちゃうよ~」

ふざけて香奈のわき腹あたりをくすぐるのぞみ。

香奈はきゃあと小さく悲鳴を上げると、笑いながら今度はのぞみに反撃を加える。

きゃっきゃと軽くふざけあう2人。

しばらく2人でつつき合った後、のぞみが香奈に言う。

「さ、いこっ。遅れちゃうよ」

そう言うとのぞみはすたすたと先を急ぎはじめた。

「うん」

それを追おうとした香奈の耳に、子供たちの嬌声が聞こえた。
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