ヒマワリ
 -このあいだの川原の男だ……

男の子がしゃくりを上げ始め、ついには火がついたように泣き出した。

その声に男はびっくりしたようで、こまったように頭を掻いている。

するとまだ若い母親が、なにかを叫びながら公園から走って来た。

母親は男の手の中からひったくるように子供を奪うと、泣きじゃくる子の頭をなでながら、まるで男が子供になにかしたかのように、にらみつけた。

「ウチの子になにすんのよ!」

 -なっ・・・助けてもらっといて、なにあの態度!

母親の態度に眉を吊り上げる香奈。

しかし男は笑いながら、母親にペコンと頭を下げ― 急に思い出したようにあわてた様子で立ち上がる。

きょろきょろと何かを探している。

道の上には無造作に転がったボーリングの玉。

それを見つけ、慌てて駆け寄ろうとして男は顔を歪めた。

「イテッ」

片足に手を当て、その足を引きずりながら玉のところへ向かう。

男はそれを拾うと細かい傷を気にするように表面を撫でながら、どこかへと去っていった。
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