羊かぶり☆ベイベー



仕様が無くもないかもしれない、それでも、親身になってくれる吾妻さんには本当に感謝だ。

普段は、気に障る人だけど。

カウンセラーという仕事でなら、こんなにも親切な人だ。



「毎回、とにかく沈黙が多いです。あと、注文は彼の好きなものを任せています」



すると、吾妻さんは「へぇ」と言って、何かに驚いていた。



「みさおさん、お酒大好きじゃん。飲み物とかも、彼氏におまかせなの?」

「飲み物は、だいたいウーロン茶一択です」

「ええ……嘘だぁ」

「何ですか、その反応。彼の前で、悪酔いしたくないんです」

「いやいや。悪酔いなんてしないって。絶対、お酒強いでしょ。壮のところ行っても、ずっと飲んでるし。俺の勧めた鉄板焼き、一回も食べてくれないじゃん! あれ、めちゃくちゃ旨いのに!」

「あ。確かに、前にも言ってましたね」

「本当に旨いから!」

「わかりました。次は絶対食べます」

「言ったよ、今。『次は絶対食べます』はい! 言質を取りました!」



純粋に楽しくて、笑ってしまう。

どうして、吾妻さんとなら、これ程まで素直になれてしまうんだろう。

本当に不思議。



「今のみさおさん、生き生きしてるね」

「え」

「会話、弾んだね」



吾妻さんが、先程までのおふざけから、打って変わって優しい口調で言う。

──本当だ。

自分自身のことであるのに、他人に言われて初めて気付く。

あまりの驚きに、吾妻さんを見る。
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