羊かぶり☆ベイベー



「今の会話で、気づいたことはある?」



これだ、吾妻さんの療法とは。

私自身の解決する力を信じてくれて、サポートしてくれた。

自然にそういう方法へ、いつの間にか誘導されていたんだ。



「吾妻さんが話を振ってくださったから。あ、まさか今の会話、演技してくださったんですか……?」



すると、吾妻さんは目を見開く。



「いや、冗談なしで今のは演技じゃないよ! だって、壮の店のこと話せるのは、みさおさんだけだし」

「え」



不覚にも、ドキッとした。

私だけ、というところに思わず、反応してしまった。

違う、違う。

そんな意味なんかじゃない。

可笑しな自分の気持ちに、振り回されている。

私が私に振り回されていても、吾妻さんには一切関係の無いこと。

吾妻さんの話し方のレクチャーは続く。



「自分の好きなことを、まず相手に伝えるのも一つの手かもね。鉄板焼きに対して、みさおさんみたいに肯定的な人もいれば。「嫌い」って否定する人もいる。否定されたら、みさおさんなら例えば、何て返そう?」

「え……もう、そこで会話、終わっちゃいます」



私の答に、チッチッチッと口で鳴らしながら、人差し指を左右に動かす。
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