羊かぶり☆ベイベー
「うん。また次回、教えてよ」
「……わかりました」
──先には、教えてくれないんだ。
気になるが、そう言われたら、仕方がない。
素直に宿題を持ち帰ることにしよう。
何だかんだで、カウンセリング終了の時間になった。
とりあえず、話し方のコツは聞けたので、明日はそれを実践する。
「ありがとうございました」
「こちらこそ、今回もありがとう」
床に置いた鞄を持ち上げる。
椅子から立ち上がる前に、私は不意に思い出したことがあった。
「そういえばこの前、吾妻さん、食堂でお昼、食べられてましたね」
「ああ……あのとき、食堂で会ったね」
そう言って、吾妻さんは眉尻を下げる。
またそんな申し訳なさそうにする。
吾妻さんの方が、よっぽど気にし過ぎる性格だと思う。
しかし、そこには敢えて触れない。
いちいち言うことで、余計に気負わせてしまうような気がしたから。
それよりも、気になることがあった。
「吾妻さん、女の子に囲まれて、モテモテでしたね」
「何それ。妬いてる?」
汐里でさえ、イケメンだと騒ぐほどだから。
少しだけ、からかうつもりで言ったのに、見事に打ちのめされた。
「だ、誰が!」
顔が熱い。
この対応の一つひとつが、女子にモテる秘訣なのだろうか。
こんな人なら、きっと──。
「彼女、居るんですか?」