羊かぶり☆ベイベー
きっと、女の子には困らないんだろうな、なんて余計なことを考える。
私には関係の無いことなのに。
私が聞いたのに、吾妻さんからなかなか返しが戻って来ない。
──いつもなら、直ぐ返してくるくせに。
内心で悪態を吐いたとき、やっと吾妻さんが苦笑いで返してきた。
「気になる?」
「え」
「どうして知りたいと思ったの?」
「や、別に深い意味は……ただモテるんだろうなって、思っただけで……」
「そう」
もしかして、まずいところに触れてしまった?
変に冷や汗が滴る。
すると、吾妻さんは相変わらず苦笑いで居る。
「ごめんね。カウンセラーの決まりで、そういうプライベートなことは教えられないんだ」
「あ、そうなんですね。失礼なことを聞いて、すみませんでした」
「いいえ。ただの友人同士とかの関係なら、普通の会話なんだけどね」
そうだ、あくまで私はクライアントで、吾妻さんはカウンセラーだ。
その線引きを、越えてはいけない。
それに、きっと私自身、この人と深く親しくなってはいけない、そんな予感がする。
これ以上は、親しくなれない。
私を勘違いをさせるような、何てこと無い表情で、吾妻さんはこちらを見てくれているけれど。