羊かぶり☆ベイベー
そんなことよりも、今の何気無い会話の中にあった、あるポイントに気が付いた。
『酒飲むの?』
彼のこの言い方に含まれた意味は、きっとこういうこと?
「ユウくんは? お酒、好き?」
私が尋ねると、お冷やを静かに置く。
「……うん? あんまり。付き合いで飲む程度かな」
「仕事の接待もあるし、大変だね」
「それは、まぁ。でも、人による。例え、仕事でだとしても、楽しい人は稀には居るし」
「そっか。さすが営業さん」
「いや、全然」
これでもいつもに比べたら珍しく、そこそこ会話が続いている方だ。
これは、吾妻さんのお陰かも。
もう一押し、何か行ってみよう。
「ねぇ──」
「なんかさ──」
私の声に、ユウくんの声が重なった。
2人してハッとして、話そうとしたのを止める。
私の方は、行き当たりばったりなことを言おうとしていただけだ。
手振りで譲る。
「いや、なんかさ……最近、みさおちゃん、急に変わった気がして。何かあった?」
きっかけなら、貴方ですが。
貴方の浮気現場を目撃してから──。
『彼氏さん。本当に浮気だったのかなぁ』
突然、吾妻さんの顔が浮かんだ。
あの時の吾妻さんは、いつもの私をおちょくる様な笑顔ではなく、真剣な表情だった。
まさかとは思うが、私よりも真剣に考えてくれていたような気がする。
「それは……」
私の言葉を待つ彼の無表情の中に、ほんの僅かに見えている好奇心。
それが純粋なものなのか、はたまた、面白がられているのかは分からない。
私を急かす動悸に、そっと息を吸い込み、静まる様に促す。
「私、このままじゃ駄目な気がして」
「……何が?」