羊かぶり☆ベイベー
「な、何がって言われると、アレなんだけど……」
「うん」
「も、もっと……しっ、しっかりしないと、って思って」
「何で、そんなまた……既に真面目で、結構しっかりしてると思うけど」
「そんなことは無いし、そ、そうじゃなくって……」
階段の踊り場で一緒に居た営業の後輩ちゃんとは、あれ以降、本当に何も無い?
あの時、私が覗き見してしまった日に、あなたが後輩ちゃんに言っていたことは、全て本心?
覗き見て、盗み聞きまでした私が言うのも何だけど、何も心配するような関係ではないと、本当に信じても良いの?
もしかしたら、私、あなたのことをちゃん好きなれるかもしれない。
こんなこと聞いたり、言ったりしたら、そりゃ面倒臭がられるんだろう。
でも、ここで勇気を出して、素直に自分の内にある気持ちを晒け出していかなければ、何も変われない。
「えっと……あの、ね……?」
素直に打ち明けていかないと、何も変われない。
そう思っているはずなのに。
どうしても良い顔をしていたい、羊かぶりな私は相変わらず狡い奴だ。
誰彼構わず、嫌われたくなくて、怖くて、それ以上が言えない。
開きかけた口が少しずつ閉じて、ついには固く結んでしまった。
きっとしばらくは、まともに開かない。