羊かぶり☆ベイベー
「みさおちゃん?」
「……最近、だ、ダラダラしがちだから、生活習慣、考え直さないといけないと思って。それだけ」
「ふーん?」
当たり障りの無いことを言っておけば、何とかなる。
私の悪い癖。
本当に言いたかったことは、そんなことじゃない。
いつも、それに悔やみ、悩まされている。
素っ気なく返されて、安堵する反面で虚しくなった。
「そ、そういえば! もうすぐ社員旅行だね」
「ああ、またこの時期が来たか……」
咄嗟に浮かんだ話題を、そのまま吐く。
せっかく吾妻さんに、そして自分自身に背中を押されたのに。
こんなことしか言えない。
吾妻さんのカウンセリングルームでなら、少しずつでもやる気になれるのに、実際の場面となると、こうも怖じ気づいてしまう。
何で、何で聞けないのかな。
胸つかえている黒くて、丸くて、大きいイメージのもの。
それをどうにも動かすことが出来ない。
彼の「へぇ」の表情は見逃してしまうし、真実も暴けないまま。
今日も、良いとこ無しだ。