羊かぶり☆ベイベー
吾妻さんの質問に、考え込む。
私、ちゃんと楽しんでたのかな。
どちらかと言えば、緊張が勝っていた。
それどころか、自分が喋ろうとする度に、彼の仕草や心理にあれこれ頭を回して、疲れてしまった。
例えるとしたら──。
「面接……みたい、な」
「ん……? 面接?」
「そうなんです。物凄く体が強張っちゃって」
「ほぉ、ほぉ」
「ちゃんと、相手が求めてる答は何か……って、考え出したら、思うように話せなくなりました。だから、楽しめたかと言われたら、ちょっと違うかなって……」
気持ちは前向きでいるはずなのに、上手く進めない。
なんてもどかしいんだろう。
相手の気持ちが本物だと分かって、嬉しいと思ったはずのに。
なかなか一歩、踏み出せない。
変わりたい反面で、現状維持を望んでしまう。
勢いが良いのは、このカウンセリングルームに居る時だけの私は、内弁慶の臆病者。
なんて言ったら、仕事とは言えど、せっかく親身に相談に乗ってくれる吾妻さんを怒らせてしまうんだろうか。
言わなくても、正面の吾妻さんから、息を吐き出す音が聞こえてきた。
「本当に気にしい、だなぁ」
吾妻さんは眉を下げる。
「人がどう思うか、顔色を窺って空気を読もうとするのは、みさおさんが優しい証拠なんだろうけど。少しくらいは、自分本意で生きても良いんじゃない?」
「そ、そうでしょうか……」
「うん、納得してない顔だね」