羊かぶり☆ベイベー



「思ったことを口に出す人が少しは居なければ、今の生活や常識は無いよ。あとは、みさおさん、人はだいたいが建前って言ったよね」

「それが、何か……」

「感じ方は、それぞれだけど。俺が思うのは……建前は、本音を隠すためのもの。本音を隠したいが為に、人は建前を言う」

「それは……そうでしょうね」

「その隠した本音を出さずして、そこから1歩も変わることは、出来ないと思うよ」



優しく、責められた。

でも、かえって有難いのかも。

きっと、こうして促してくれる人が居なければ、私はきっと1歩も動こうともしなかったのだろうから。

もし、今も吾妻さんと出会えていなかったら、私はユウくんのこと、こんなに追及しなかった。

浮気を見た、あの日。

私が店長のお店に行っていなかったら。

私、今頃どうなっていたんだろう。

きっと、自分の感情に完全に蓋をして、誰かのご機嫌を取るだけのお人形さんの様に、相変わらず空っぽな私だっただろう。

それが、この人と出会えたことで、必死にもがきながら、私は今、変わろうとしている。

吾妻さんがくれる、力強い言葉の1つ1つで。


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