羊かぶり☆ベイベー
「仰る通りです……」
そう言う私の目線は、吾妻さんの手元まで下がる。
「今までの私」のことを言われているようで。
周りから見れば、今までも今も、さほども大差無いのかもしれない。
それでも、私は私を信じてあげたくて──。
「みさおさんは、もっと自信持って良いんだよ」
本当に、この人って凄い。
声に不思議な力でも、宿っているんだろうか。
「だって、みさおさんは既に、歩き出して少しでも前に進んでいる訳だし」
「……そ、そうでしょうか」
すると、目の前に、青のチェック柄のティッシュボックスが置かれた。
やっぱり、隠しても無駄なんだ。
うつ向いて誤魔化していたつもりの言葉も、滲む涙も。
お礼を言って、素直にそこに手を伸ばす。
涙をそっと拭き取ると、吾妻さんとバチリと目が合う。
「間違いなく。もっと、ちゃんと自分を褒めてあげましょう。せっかく頑張ってんのに、可哀想だ」
彼の目が、温かく見守ってくれている。
だから、いつも焦る気持ちも、直ぐに落ち着きを取り戻せるんだ。