羊かぶり☆ベイベー
ダム観光を終え、お昼に本場のお蕎麦を食した後、アンティークや食べ歩き、産地の名物などのお土産店が並ぶ通りにやって来た。
私は、ずっと先輩と2人で観光を楽しむ。
「伊勢さん。このオルゴールのお店、入ってみない?」
「良いですね。行きましょう」
そのオルゴール店は、白い建物で、まるで教会を思わせるような雰囲気を醸した外見だ。
中に入ってみると内装までもが、そう思わせる造りだった。
観光客も思ったより多く、賑わっている。
周りの人達の様子を観察してみても、全く捌けていく様子がない。
それも、直ぐに納得が出来た。
店内に置いてある品数が多いのに加え、そのどれもが芸術品としか言い様が無かった。
繊細で美しいデザインや動物の愛らしいもの、ビックリ箱を模したユーモアのあるデザインまで、やたらめったらある。
これは、確かに飽きない。
長居してしまうのも、頷ける。
2人であれも良いね、これも良いねと言い合う。
キリが無かった。
先輩も同じことを思ったらしく、悩んだ末に言った。
「娘に1個買っていこうと思うんだけど……やっぱり一番、最初に良いと思ったのを買っていくわ」
「あ、はい」
「伊勢さんは決まった? どれか買う?」
「うーん……まだ悩んでます」
「そう。じゃあ、先に買ってくる。このままだと、訳が分からなくなっちゃいそう。買ってから、続きを見ようかな」
「良いですよ。私、この辺りの動物の所に居ますね」
「は~い」
何だか先程のダムでのことと、既視感を感じるが気にしないでおこう。
オルゴールの続きを見ていく。
リス、犬、猫、クマ、ペンギン……どれも可愛い。
丸々よく太った三毛猫が、屋根の上で寝そべっているデザインに目がいった。
見惚れていたとき、背後から声を掛けられる。
「それ、可愛いね」