羊かぶり☆ベイベー
「それは、懲りずにカウンセリング、来てくれる、ってこと?」
「それ以外に、何があるんですか」
すると、吾妻さんの表情は、少しずつ安堵に変わっていく。
そして、息を吐き出した。
「俺が原因で、せっかく頑張ってる、みさおさんの気持ちを挫けさせてしまっていたら、どうしようって、ずっと考えてた」
「私なら大丈夫です。ある程度のことは、寝て忘れますから」
吾妻さんとの、あの事だけは水に流す。
考えても、仕様の無いことだから。
それ以外のことは、私の背中を押す、ちゃんと私の為になる、助言や慰め、癒してくれた大切な時間。
忘れるなんて、勿体無い。
「そっか……ありがとう。本当に優しいね」
「いえ」
本当に、そんなことはない。
私の自分勝手な考えだ。
臭いものには蓋をする原理。
やっぱり考えたって、仕様が無いから。
それなら考えることも、思い出さないようにするために、誰の口からも、その話題を出させなければ良いだけ。
記憶を薄れさせたい、という自己防衛本能で「平気」と言っているだけだ。
申し訳なさそうに謝り続ける吾妻さんの話に、ようやく切りがつき、ほっとする。
しかし、そう思ったのも束の間。
吾妻さんの口が動いた。
「みさおさん。良かったら、この後……壮の店、行かない?」