羊かぶり☆ベイベー
「今日は、どう感じ取ってくれるのか、元気を取り戻してくれるだろうか、と。セレクトを試されていると思うと、燃えてしまうんです」
顔に出ない分、考えていることが意外過ぎる。
中身は結構、熱いお方らしい。
予想外過ぎて、思わず店長の顔をよく観察してしまった。
「お客様?」
「あ、いえ。次回、お邪魔したときは是非『おまかせ』よろしくお願いします」
「わかりました。では、今日はノンアルコールも無しですか?」
「そうですね。アルコール、欲しくなっちゃうので」
「では?」
「うーん……私は黒烏龍茶で」
ユウくんに飲み物を尋ねようと、彼を見た瞬間、いきなり視線がかち合う。
一瞬、息を止めてしまった。
「ゆ、ユウくんは……? どうする?」
私はあくまで笑顔を作りながら、メニューを広げる。
すると、ユウくんは我に返ったような、気を取り直したような何とも言えない反応を見せ、飲み物を選び出す。
──びっくりした……。
正直、怖かった。
私が見た瞬間、顔が既にこちらを向いていたようだ。
それに、強い念らしきものが感じられた。
その念、感情が私に向けてなのか、もしくは他の誰かに向けられたものなのか、断定は出来ないが。
「俺も同じもので」
「黒烏龍茶、お2つですね。かしこまりました」
注文を受けると、店長はカウンターへ戻っていく。
すると、再び私の体は、強張り始めた。
せっかく店長との会話で、リラックス出来ていたのに。