羊かぶり☆ベイベー
陽もまだ沈み切らない普段の帰路を、自身の通勤車で行く。
そのハンドルを握る私の頬は、涙に濡れていた。
車は帰路を、問題なく進んでいた。
しかし、気分に問題大ありだ。
このぐちゃぐちゃの顔のままで実家には、とても帰れない。
父親、母親には、とてもじゃないが見せられない。
親に、こんなみっともない顔面を晒すくらいなら。
そんなことするくらいなら、いっそのこと──
ハンドルを、時計回りにきる。
いつもの道から逸れて、普段の私ならしようとも思わないことを、この際してしまおう。
今までも何回か、思い至ったことはある。
だけど、どうしても勇気が出なかった。
最後まで、やり通す勇気は無かった。
だけど、今なら、出来る気がする。
いつもより20分くらい余分に、車を走らせた。