羊かぶり☆ベイベー
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「──と、いう訳です」
毎度のことながら、騒がしいお昼の食堂にて、汐里と昼食をとっていた。
その汐里はというと、私の目の前で、あんぐりと口を開いて固まっている。
「お、おーい、汐里?」
しばらく呼び掛けても、反応は無い。
顔の前で手をヒラヒラさせると、ようやく瞬きをしてくれた。
「嘘でしょ?! あのイケメン彼氏と、とうとう別れちゃったの?!」
「声、大きいって」
「だって! えええ……?」
徐々に項垂れていく汐里は、私より落ち込んでしまっている。
机に突っ伏した汐里が、目だけをこちらに覗かせた。
「みさおは?」
「私?」
「大丈夫なの? また上辺では笑ってるけど、傷心してるんじゃないの?」
「心配しないで。私は自分でも、びっくりするくらい元気です」
「ええ、なんでー?」
「優しい終わり方、出来たから」
最後の最後だけはお互いに、思い遣る終わり方だった。
今だけは、羊の皮も被ることもない。
少しも怒ってもいない。
今までの彼との出来事を思い起こしても、悪い印象だとは、まるで思わない。
それどころか──。