羊かぶり☆ベイベー
「前に進みたいな」
ちゃんと、私からも正真正銘の愛情を向けられる人と。
疑わずに、一緒に居られる人と。
まだ出会うまでには、時間がかかるだろうけれど。
だけど、年齢を気にして、焦ったって何にも良いことは無い。
服と一緒。
取り敢えずで買ったセール品の服は、古びて、気に入らなくなれば、簡単に手放してしまうもの。
だけど、これだ! と言って買った少し値が張る服は多少、草臥れても手放せない。
自分にとっての、一点ものだと思える人の為に尽くさなければ。
「みさお」
「ん」
「彼と別れた途端、良い顔するようになったね」
「そう? なら、私にとって、良い選択だったんだ。良かった」
「ちょっとー。元彼に悪いとは思わないの?」
「付き合ってたときの方が、悪いと思ってたから。お互いに、これで良かったんだと思うよ」
私が笑うと、汐里もつられた。
「でも、確かに、そうやって、みさおが晴れやかな表情で居てくれる方が、親友にとっても安心かも」
汐里の言う通り、今は気分が晴れやかだ。
思い悩んでいたときのような、黒い靄は全く感じられない。
相手に本音を晒け出す勇気を与えてくれたのは、紛れもなく、あの人だ。
私の恩人で、もはや師匠。
今も、私にいつも向けてくれる、あの笑顔が浮かぶ。
ああ、早く会いたい──。